「中医学」「生理」について教えて先生! 王 愛延 中医学講師。北京中医薬大学卒業。北京市赤十字朝陽病院医師として勤務。1994年に来日。2005年東京医科歯科大学にて博士号を取得。現在は日本中医薬研究会専任講師として活躍。

中医学と西洋医学はどうちがうんですか?

何か症状があったときに、根本から治すのが中医学です

なにかの症状があらわれたとき、西洋医学では、病名を確定し、その病気に対して治療を行います。一方、中医学では、常にからだ全体をみて、体質や生活習慣も含めて、その症状の原因を判断します。そして、からだのバランスを整えて体質を改善し、根本的な治療を目指します。


中医学では、気(エネルギー)、血(血液とほぼ同じ意味)、津液(体内の水分)の3つでからだのバランスをあらわします。この3つが十分でバランスよく保たれているのが健康なからだで、バランスがくずれたり不十分な状態になったときを病気と考えます。不足した状態を「虚(きょ)」、流れが悪い状態を「滞(たい)」といって、たとえば気が不足していれば「気虚(ききょ)」、流れが悪ければ「気滞(きたい)」と呼んでいます。「気虚」や「気滞」は?お血(おけつ)(血流の停滞)を引き起こします。

生理痛ってないのが普通なんですか?

生理痛は、ないのが普通です。

日本では、生理痛があるのは当たり前と思われているようですが、中国の女性は皆、生理痛はないのが普通と考えているんですよ。痛みがあるということは、なにかの病気やトラブルのサインだと考えるのが当然でしょう?だから中国の女性は、生理痛があるとすぐに相談にいくんです。


だるいとか、下腹部が重い感じがする程度ならあまり気にしなくてもよいのですが、強い痛みがある時は注意したいですね。痛みだけでなく、生理中の便秘や下痢、月経前症候群といわれる、からだのむくみや肌荒れ、イライラなども、本来は起こらないのが正常なんです。

生理がこないと「ラッキー」だと思っちゃいます。

それは危険。生理は決まった周期でこないとダメなんです。

女性のからだには、周期的なリズムがあります。生理はそのあらわれ。健康なら、女性ホルモンが一定のレベルで分泌されるので、生理は決まった周期でくり返されます。それは、子宮が健康であることや、気と血が十分で、スムーズに流れていることの証明でもあるんですよ。


生理の周期は24日から39日くらい、一回の生理の期間は3~5日が標準です。1人の人の周期は一定なのが理想なんです。たとえばあなたの周期が27日なら、それがずーっと続いていれば大丈夫。1日とか2日の変化なら気にすることはありませんが、1週間以上違ったり、だんだん短く、または長くなるようなら、なにかのトラブルがあるかもしれません。

また、中医学では、女性のからだは「7」の倍数を節目に変化すると考えます。生理も13~14歳で始まり、49歳頃閉経するといわれています。

生理中にからだを冷やしちゃいけないのはなぜですか?

血液の流れが悪くなるからです。

生理は、全身の血と気が、定期的に子宮に集まることで起きる「血の動き」なんです。血には、温めればよく動き、冷やすと滞(とどこお)るという性質があるので、からだを冷やすと血の流れが悪くなってしまうのです。


血流が悪くなると、経(けい)血(けつ)などの不要なものが体外に排出されにくくなり、それが刺激になってトラブルを引き起こしたりします。服装はもちろん、食べ物や飲み物も温かいものをとるように心がけるといいですね。

経血の量って人とくらべたことがないからわからないんですが。

量とか色を知っておくと、自分の健康状態がわかります。一回の生理の経血の量は、30~50mlといわれていますが、実際に量を測るのはむずかしいので、ふだんの自分の経血の量を見て覚えておきましょう。

色はやや暗い赤色で、粘りや固まりがないのが正常です。色がくすんだり、濃すぎたり、サラサラで水っぽいのは要注意です。このような状態が見られたら、体調が悪くなっているサインかもしれません。

痛みはどうして起きるんですか?

痛みの原因は4つに分かれます。

生理痛は、血の動きが滞った状態の「?血」が原因と考えられます。

さらに、痛みや不調のタイプによって、次の4つの種類に分かれます。


血寒血瘀(けっかんけつお)

おなかを温めるとやわらぐ痛みで、冷房などによるからだの冷えが原因です。

生理中はパンツスタイルで生活するとおなかが温まります。

気滞血瘀(きたいけつお)

ストレスなどが原因で、おなかを押さえるとかえって痛みが増すタイプです。

できるだけからだを動かして、ストレスを解消するようにしましょう。

気血両虚血瘀(きけつりょうきょけつお)

おなかを押さえるとやわらぐ痛みで、むくみが出ることもあります。

疲れやダイエットなどによる栄養不足が原因なので、朝食をしっかりとるようにします。

血熱血瘀(けつねつけつお)

体内に熱がたまって血がドロドロになっている状態で、おなかを押さえたり温めると痛みが増します。


辛いものやお酒を控え、早めに寝るようにします。

生理痛や生理不順を予防するためには、どうすればよいですか?

当帰の入った漢方薬がおすすめです。

中医学では、植物など薬効のある自然の素材からつくる生薬を組み合わせた漢方薬を使います。生理痛の原因の?血を改善させるのに効果的な生薬が当帰(とうき)です。生理痛の原因となる冷えを改善する効果があるほか、血行をよくし、子宮のけいれんを抑えて痛みをやわらげます。


中医学では「女性の先天は血である」と言われるほど血は大切なものです。血を補い、全身に巡らせることが必要。当帰には古い血を排出して新しい血液をつくるはたらきがあるので、貧血が予防でき、生理周期を正常にします。便秘の改善や美肌、髪の潤いにも役立ちますから、女性には強い味方であり、女性の「宝」ですね。

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